なんてこった

たまになんか書くかも

おやすみなさい

今日の日記は楽しくないどころか不快なやつだと思う

新着順でこれを見てしまった人、今すぐ引き返してくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

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魔女が亡くなった。

魔女と言っても架空の存在ではなく、実在する人の話。

 

私の家からいち、に、…

うーん、数えたことないからわかんない

8〜10軒くらい先に住んでた人の話。

(ぎりぎり近所かな)

 

その人は私の家から出て直進し、曲がり角を曲がる、その曲がるところの家に住んでた。

 

名前を知らなかった。亡くなるまで。

 

冒頭に魔女と書いた。

魔女だった。私の中では。

あの人がどんな人だったか全然知らない。でも気になってた、と思う。

 

初めて存在を認識したのは小学生低学年の頃。

学校から帰る時にその人を見かけた。家に入るところだった。

私は頭が悪い。今でも悪いけど小学生の頃はもっとダメだった。人の顔を覚えるのも苦手だった。だけど、その人だけは。

1度見ただけで忘れなかった。なぜか。

 

夏でも冬でも。

長い丈の服を着ていた。

真っ黒なロングワンピース(長袖)に真っ黒のブーツ。黒の三角のサングラス。▽←こうだったか、△←こうだったか。どっちもだったか。

 

なんせ派手な装いに見えたとおもう。

派手と言うよりは、奇妙…?

だから忘れなかったのかな。

 

白髪に少しの黒髪が混じった髪を真上にしばる。お団子がトレードマーク。

日傘をさしたりささなかったり。

 

ロングワンピースの柄はあったりなかったりした。共通していたのは全部が真っ黒だったってこと。

 

失礼な話。見た目は、昔読んだ絵本で出てきた魔女のようだった。

ねむれるもりのびじょ、でいうところの、最後の魔女。

呪いをお姫様にかける。そういう魔女みたいな…

 

でも、今の私は知っている。明らかな悪意を持っている人以外は、そういうお年寄りの方が、随分親切なこと。

 

子供の頃の 私もなんとなくそれを感じ取っていたのか、その人を見かけると、目が釘付けになってしまった。気になる人、そういう感じ。

 

【近所の人】に会うとあいさつをしなさい。

そう教えられた。おはようございます。こんにちは。こんばんは。

 

でも。魔女にはできなかった。

魔女を見ると、言葉が出てこなかった。

多分、緊張?

魔女だと思ってるから。失礼なガキンチョ。

 

魔女の生態は全く謎だった。

近所のおばあちゃんたちは、井戸端会議をする。集まって、あれやこれや話をする(私はあれが苦手だったりする…)

しかし中に魔女がいたことはない。

魔女が近所の人と話しているのを見た事がなかった。いつもひとりだった。

そこに惹かれたのかもしれないね。

 

そもそも魔女を見掛けるのは3ヶ月に1回くらい。あまり外に出ていなかったのかもしれない。(全くもって謎だ。今知るよしもなし)

 

 

そんなある時、バス停でバスを待っていたら駅から魔女がやって来た。

「あ!」慌てて口を塞いだ。

 

その日もいつもの三角のサングラスだった。

あれがお気に入りなのかな。

一つだけわかったこと。

魔女はほうきで空を飛ばない。

バスに乗るんだってその日知った。

 

真夏の暑い日だった。

蜃気楼でゆーらゆらする地面を見るのが好きだ

溶けてる

溶けて溶けて

あー

と思いながら歩いてたらゆらゆらした人影が前からやってくる。

「あ!」口を塞いだ

 

魔女だ。

今日も長袖ロングスカート

 

私は考えた。

今日こそあいさつをしたい

    もんもん

 

もんもん

 

ゆらゆらした魔女とすれ違う寸前。

 

こんにちは…って言った

魔女がピタッと足を止めて私を見た

口の端をにこ、と持ち上げて「あぁ、こんにちは」と返してくれた。

 

なんてこった

 

ゆらゆらして天と地の境界が曖昧であったため、魔女が目の前にいるのかいないのか

わからなかった

 

もう声を忘れてしまった

どんな声だったのか。綺麗な声だったことは確か。

たったその一瞬だけが魔女とのかかわり合いだった。

一つだけ覚えているのは、口紅の色が真っ赤だったこと。

 

その後、すれ違うほどの距離に会う機会はなかった。

駅やバス停で見かけるくらい。

 

どこに行っていたんだろう。

もしかするとショッピングモールとかで朝イチに行って椅子にぼうっと座っているタイプの人だったのかもしれない。もはや知るよしはなし。

 

あの日、たった一言言葉を交わしてから魔女が少し違って見えた。

 

というより解像度が少し上がった

口紅。口紅に目がいくようになった。

真っ赤な日もあれば、真紫の日もある。

あんなに紫の色をした口紅を見たのはりとるまーめいどのタコさんか魔女くらいだった

(化粧に疎いためオーソドックスな色なのかもしれないけど)

 

あともうひとつ。

近所のおばあちゃんたちの中で1人だけ、背が高く、背中が曲がっていないことにも気づいた。

凛としたあの人を見かけるとうれしかった。

 

人を見て嬉しいと思うことがある。

たまに、そういう出会いがあった。

魔女もその人だった。

だから、区切りのためにこうして書いてる。

絵本を閉じるため。

あの人の中に私はいないけど、私の中にあの人はいる。

そうした行いが、今回はいると思ったの。

 

そうだ。魔女が知らないところでひとつだけ、私が関わったことあったんだった。

 

私が小学生の頃、魔女は犬を飼っていた。

何犬だろう。わからない。オオカミのような風貌をして、いつも怒っていた。ハルちゃん、などとかわいらしい名前だったけど。常に通行人に牙を向けていた。魔女が飼うにはこれしかないというくらいオオカミだった。

外飼で、鎖には繋がれてたんだろうけど、魔女の家の柱?の上に身を乗り出して、人が通れば牙を剥き、吠える。こわい。

 

飛びかかってきそうだった。魔女の番犬。

ある日、いつものようにハルちゃんに吠えられながら家に帰ろうとしてたら、中年の女性呼び止められた。

 

チラシをポストに投函するバイトの人だろうな。

「お願いがあるの、あの家(犬が)いつも怖くて、ポストに入れてくれないかな?」

 

今思えばなんでやねん、とまあまあムカつく出来事だなこれ(笑)

 

子供の方が危なくない?🥺

 

子供だから守らなくちゃダメなこともあれば、子供だからこそ大丈夫なことも世の中にはある。

この人は後者だと判断したんだろうな

まあ基本的に子供は大人に逆らえないものです。コク、と頷いて聞いたことないほど威嚇されながらポストに投函。

 

助かっただかなんだか言われた気がするけど覚えてない。

家まであと数歩ってところで魔女が帰ってきたから。

なぜわかるの、ってハルちゃんは魔女にだけ忠誠を尽くしていたから。

魔女の前でハルちゃんは嘘みたいに甘える。くぅうぅ〜んって鳴く。ほ。

 

魔女のちからの前ではあのオオカミも勝てなかったのかもね(かつてそういう戦いがあったのかもしれない)

 

ハルちゃん、魔女、ポスト投函のおばさん、小学生のわたし。

以上がこのお話の登場人物。

 

亡くなったことも、知らされなかった。

他の家の人が亡くなった時、手紙みたいなのがポストに入ってた(とおもう)けど、魔女はなかった。

 

去年のクリスマスの1週間くらい前に、亡くなったと認知された(とおもう)

少しだけ、だけど色濃い存在だった魔女。

 

挨拶を交わした、あれ以上の近い存在じゃなくてよかった。

たとえば、マンションの隣の人だとかだったら。それでもだめ。

8軒先の魔女だから1度だけ、挨拶を交わした関係だからよかった。

 

ここからは罪悪感のはなし。

11月中頃だったかな。

私は異変に気づいた。

魔女の家は木で覆われていた。

その木の葉が落ちて、溝から溢れかえっていた。

おかしいな、と思った。今までの秋、そんなこと一度もなかったから。ちゃんと手入れしてたんだと思う。

 

だから、たぶん、その時に魔女は亡くなっていたんだとおもう。

私、気づいてた。異変に。なのに、沈黙してた。

関わりはなかったけど、間違った選択をしたかもしれない…。ごめんなさい。

勘違いでもいいから、たとえば、やくしょとかに電話するとかできた?

後からああだった、こうだったとしか言いようがないけど、後悔っていつもそうだ。

 

クリスマス周辺、からつい先日まで、すごいにおいが魔女の家の前を通るたびにしていた。

言葉が悪いけど、こどくし、したんだと思う。それで誰にもずっと気付かれずに時が経って…。私には何も出来なかったよ。あなたを思い出すくらいしかできない。

 

魔女が亡くなって、色々と見た。

家具を全部出されて、冷蔵庫に貼られた水道局のマグネット(大量)だとか。

またある日は中年男女が家に入っていくのを見た。息子さん、娘さんがいたんだろうか。なにもわからない。魔女の弟子かもしれない。

家具を出されて、張り紙が貼られて。工事の人がやってきて。そこからはトントン拍子。

 

魔女の家にキンモクセイがあった。

秋になると、とてもいい香りがするの。

私、あれが好きだった。魔女の家からするキンモクセイの香りが、一番好きだった。

 

でも、最近切られた。

もう、ここを通ってもキンモクセイの香りはしないんだって思うと切なかった。

 

キンモクセイが無くなると、木でおおわれていた魔女宅の全貌が初めて見えた。

あんなところにバルコニーがあったなんて。

あの場所からなら、星が綺麗に映るだろうな、と思った。

魔女はそうしていたのかな。

 

家が、どんどん壊されていく。

シートに囲われて、もう何も見えなくなった。

がしゃん。がしゃんと音をたてながら…

さようなら…

 

声から人は忘れていくって言うけど、本当なんだよね

声が思い出せないの

故人、みんな。

あの人の声は綺麗だったんだよ。

 最後魔女を見たのは去年の春くらい。

駅で小さなおじいさんと話しているのを見かけた。

魔女が人間と話しているところを初めて見た。うん、私が知らないだけ。それがいいの。

 

書いてて思ったけど、私もいつの間にか他の誰かから魔女だと思われているかもしれないね。近所には子どもがいないけど。

魔女のこと魔女だって言ってるのをもちろん本人は知らないし、本人も思っていないだろうし(当然)

つまり、「小学生のわたし」が「魔女」になりうることもあるってこと。…なんでもないよ

 

父にねぇ、角の家の人亡くなったの?って聞いたら、ああ、ニシノサン(偽名)?そうかもしれないねって。

 

私それ聞いてびっくりして、魔女の名前はニシノサンって言うんだって。初めて知ったから。20何年も生きてきてさ。

 

ごめんね、気持ちの整理のために書いた意味不明な日記だね。 

そもそも私のこと誰?誰?って感じだし、魔女?ってなるよね。うん。置いてけぼりでごめんね(たまたま見ちゃった人に向けての謝罪)

 

絵本を閉じなきゃ、って思ったから書いたんだ。いつでもまた開けるんだけど、忘れないうちに、書いておきたかったから。

それじゃあね、いい夜を。